パイロット版 其の弐 『筋肉製造工場の怪』


山田とゐち、29歳、ダメ人間をこよなく愛する、NATURAL BORN KICHIGAI(通称:ボン吉)でございます。

たまに小生はエアロビに参加してるのですが、まさにそこは動物園か、モンスターハウスか?
いや、きっと大人のワンダーランドさ。
とにかく一歩踏み入れると、そこは異次元空間なのです。

【妖怪たれぱんだ】
最初に目にしたこの妖怪。
一見普通の女性かと思いきや、よく見ると腹で「たれぱんだ」を飼育してる。
たれぱんだの重なりが多い奴程身分が高いのか?
「2たれぱんだ、3たれぱんだ」なら下っ端だ。
多分あの「5たれぱんだ」が親玉かもしれん。
挨拶した方が良いだろうか?
奴等は常に室内端の後方に陣取る、まるで修学旅行のバスの最後部座席には不良が座るのがお約束かのように。
今まで不機嫌に垂れてたたれぱんだの頬が、ダンス開始で上下にポヨポヨ揺れ、笑ってるみたいで楽しそうだ。
だが飼い主は今にもぶっ倒れそうだ。
やはり生き物を飼うという事は、苦労も絶えないんだな。

【妖怪ゴボウ女】
逆に骨と皮しかない妖怪も共存している。
奴等は身軽で動きが素早い。
アタフタする間に背後から攻撃されるぞ?
何より、あの笑顔に気を取られては駄目だ。
律動体操する北朝鮮の子供に負けない位の笑顔で踊ってやがる。
何故笑う?何故笑いながら踊る?
貴様らヤク中か?新手の宗教か?
俺を危険な世界に引き込むつもりか?
その手には乗らんぞ?騙されんぞ?
子供の頃、母親に「知らない人には飴を貰っても付いて行くな」と教わったじゃないか、それを思い出せ!
ああ、でももうダメかもしれん。
目を閉じても奴等の笑顔が脳に焼き付いてる、奴等の思う壺だ。
気づけば奴等の魔術により俺も笑顔で踊っていた。


だが、明らかにこの妖怪達を操作する総帥的存在がいるはずだ。
ん?奴か?
前方中央で、派手なレオタード姿で踊ってやがる。
スピーカーから聴こえる張り裂けんばかりの音楽と「ワン、ツー」の声。
そうか、奴の仕業か?俺達に顔を見せず訳の分からん呪文など唱えおって…
まあ、悪の親玉は正体を曝け出さぬもの。
よし、その正体暴いてやる!
こっちを向け!
その悪魔がにこやかに振り向いた。

…可愛い。

俺は積極的にエアロビに通うようになった。
そう、俺は悪魔に魂を売ったのだった。



【追記】

この作品は筋トレ編に続き書いた物です。
どうもあの笑顔で踊るインストラクターが気になってしょうがなく、ネタにしたものです。
実際は、こんなに妖怪ばかりではありません。
普通のおっさんもいるし、普通に可愛い子もいたりします。
とにかく、こんな風に馬鹿にしたような書き方をしてますが、基本的には「好き」だからこそこうやって書くのです。
人間、誰だって嫌いな物には興味を持ちません。
スポーツクラブを辞めてから、小生の肉体はまたおっさん化してきてます。
エアロビまたやりたいなぁ。。
早く時間に余裕の出来る体に戻りたいっす。。


著者近影


   
Copyright (c)Toichi Tsushin [Yamada Toichi] 2004. All Rights Reserved.