創刊号 『理髪店主のかなしみ』


山田とゐち29歳、横断歩道の白い所のみを歩き続けて25年、最早ベテランの域に達しました。

先日美容院に行って参りました。
毎度小生は、美容師や客を観察しながら出陣の時を待つのです。
そんな時の出来事です。

待機スペース横のカウンセリングスペースで、美容師が女性客に「どんな髪型にされますか?」と聞き、客が「この雑誌の内山理名みたいにしてくれる?」とあたかも私もこの髪型なら内山理名に間違われるわよ位の勢いで注文しておりました。
笑止!幾ら美容師の腕が良くとも、内山信二似のお前を内山理名に変える事など不可能!

その隣に細身の男性客がおりました。
奴も美容師に雑誌を片手に熱弁を振るっておりました。
「俺はどうしてもこの加藤晴彦が良いと思うんだ、オダギリよりもさ」
「でも今の髪の長さではこうも行きませんよ?」
うむ、確かに、やれ加藤やらオダギリとか言う前に、ややM型脱毛化している彼の髪の量では不可能である。
美容師はそれをやんわりと言ったのだろう。

そう言えば昨年、街はベッカムヘアで溢れかえってた時期がありました。
まあ今でもたまに見かけるが、きっと奴等は人間国宝か天然記念物に指定されていて、国として貴重な存在なのだろう。
とにかくあの頃、色々なベッカムがいましたな。
アミノサプリの赤の人ベッカム、プチベッカム、後姿はベッカムだが振り返ると鶏男だった等々。

切り方や長さ等を参考にする為に雑誌を利用するのは構わないがコレにしてくれという注文は美容師泣かせである。
後で「全然違うじゃないのよ!」なんて文句つけられても困るわけだ。
そりゃ違うだろ、お前はお前なのだから。
雑誌を見てその髪型が良いと思えるのは、その髪型をしたモデルの顔型やパーツにマッチしてるからなのだ。
それに気付かず好き勝手言ってるお前に美容師は逆に文句を付けたいだろう。

髪を切り始めた小生の背後で、先程の内山と加藤がレジで清算していた。
「流石、髪型だけをみれば後姿はそれなりに内山と加藤だ!美容師って凄い」
と感動した時、その二人は手を繋いで店を出て行った。
「お前らカップルかよ!」
でも安心しろ。誰もお前らを見て「内山理名と加藤晴彦が歩いてる!」なんて思わないから。
フライデーが「加藤&内山熱愛発覚!」の記事をお前らの写真をネタに書いたりしないから。



【追記】

トイチ日記からとゐち通信に題名を変えた第一作。
タイトルも映画のタイトルを付けることにした。(だから何だ)
美容院ってみんなオシャレな髪型にしようと気合いを入れてやってくる。
だからそれぞれの人間性というものが出てくる非常に観察しやすい場所だ。
俺はもう何年も髪型の基本は変えていない。
指名している美容師さんを信頼しているので、カウンセリングは30秒で終わる。
「いつもので良いよ」ってね。
細かく変化はしているけれど、いつも通りに髪型を整えてくれる。
つまり美容師さんに任せているのだ。
腕の良い美容師さんだと思っているので、彼の思う通りにやらせている。 つまり信頼関係がそこにあるのだ。
その人も出世したみたいで、指名料金が高くなってしまったが、美容院というのは髪の毛を切るだけの為に行く所ではないと俺は思ってる。
リラクゼーションというか、会話を楽しんで、髪を切り、気持ちをリフレッシュさせる場だと俺は思ってる。
だから何時間いたって飽きないんだな俺は。
そこの美容院は可愛い美容師が多いので目の保養にもなるわけだ。ウシシ
ちなみに俺が指名してる美容師さんは映画好きでパソコン初心者の俺より2つ年下の男性である。
波長が合うって良いよね。


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