第伍号 『関が原の戦いの思い出』


山田とゐち30歳、ソフトクリームをコーンの下から吸引して食べるのが好きな『ロード・オブ・ザ・30(三十路)男』です。

小生、先日約2年振りにパチンコ店に入りました。
鼓膜を破壊されそうな音楽、煙草と銀玉の擦れる匂い漂う中、衝撃的光景が目に飛び込んだ。
暫く瞬きするのを忘れた、少年時代に憧れたヒーローの憐れな末路を見たせいで。
『CR忍者ハットリ君』は本人に代わり薄汚れた銀玉が釘という名の山を越え谷を越える。
荒れ果てた街を救う『CR北斗の拳』のケンシロウが、今じゃ荒れ果てた肌を厚化粧で隠す熟女の財布を救う始末。

ああ、何という事だ!子供に夢を与える仕事を怠り、大人の金を毟り取っているとは!
吉野家だって牛丼販売休止に追い込まれても頑張ってるのに!
俺も豚丼で我慢してるんだよ!
怒りが頂点に達した小生は『CR忍者ハットリ君』に闘いを挑んだ。

…楽しい

ケムマキ君の猫の名前、思い出せん…
そういや幼少時代、野良犬に『シシ丸』と名付けチクワ喰わせたっけ…
そんな妄想中、瞬く間にハットリ君の忍法で愛しの諭吉が姿を消したのでした。

後悔と空しさで半泣き状態の小生の隣台は逆に大爆発。
定年退職し希望を失ったような顔の小男が、小生が吸い取られた銀玉を「ゴザ〜るゴザるよハットリ君はぁ♪」のBGMと共にドル箱に蓄えてるではないか。
「ピュアな俺の財布がプアーなのに、鼻を膨らまし銀玉を出す此奴の財布は何故膨らむ一方なんだ?」

この小男を観察する事にした。
すぐさま彼の台からリーチの雄叫び。
するとすかさず彼は左手を台に向け手かざしを始めた。
更にいい大人が「ニンニンニン…」と独自の呪文を唱えだしたのだ。
「そんなんで来る訳ねぇだろ!ムー(超常現象専門雑誌)の読みすぎじゃ!」と心でツッコんだが…小生はすぐ訂正した。

…何で当たるの

再びドル箱を一杯にした彼の手は光り輝いていた。
小生はこの奇妙な魔法で大当たりしたMr.マリックに愕然とした。
実際、手が輝いてたのは単なる脂汗だった事が後に発覚したがそんな事はどうでもいい、彼はハットリ君に勝ったのだから。

都会の冬空の僅かに輝く星を見る事すら許してくれないパチンコ屋のネオンは、今日も眩しかった。
それを背にして80円の肉まんを夕飯代わりに食いながら歩く小生は、今日も貧しかった。

ニンともカンとも…



【追記】

約半年振りにとゐち通信復活!
本当に忙しかったんだもん、ネタが切れてたとかサボってたとかもう飽きたとかそういう訳じゃないもん。
暇になったんで久々にパチンコ屋に行ったんです。
最近は本当に増えてきました。キャラ物の台が。
ハットリ君や北斗の拳の他に、北島三郎やら必殺仕事人の機種がありました。
それにしてもパチンコって何が面白いんだろう。
いや、面白いと思ってやってるんだけど「何で?どうして?」って言われてもハッキリとは答えられないのが事実。
一人店に入り、心の中で「当たり来い!来い!!来い!!!」と叫んだり、リーチが外れたりするとガッカリしたり。
外面だけを観ると非常に無表情で玉を弾き続けてるわけですが、心の中はサッカーワールドカップの応援と同じレベルで騒いでる。
勝てば無表情でも心の中では胴上げしてる俺がいる。
負ければ無表情でも心の中ではオナニー後の空しさ気分。
これを繰り返すからきっと中毒になるんだろう。
まさに人間の欲望を上手く操作するゲームである。
だって、ハットリ君のリーチが観たかったんだもん。
投資額4万円。必殺仕事人で半分戻したけど…
やらなきゃDVDソフト何本か買えたな…


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