第六号 『居酒屋ゆうれい』


山田とゐち30歳、 都会の片隅で鳩の群れを見かけると、足音をたてながら小走りで近寄り、大空に羽ばたかせるのを生き甲斐にする動物愛好家です。

小生、たまに友人と居酒屋へ行きます。
先日、小生達が呑んでる横で、合コンらしき会合が催されていたんです。
20代半ば位の連中が酒と肴を囲み巧みな心理戦を繰り広げるその姿は、まさにおのれを売り込む『マルチ商法』

まず小生が目をつけたのは『ドラリーマン』
ヨレヨレの上着を椅子にかけ、額から流れ落ちる大量の汗により銀縁眼鏡がキラリと光り、Yシャツの胸には黒・赤そして滅多に使わない青の三色ボールペンを胸にさし、冬なのに半袖のYシャツは脂汗でシースルー、透けてみえる白いランニングシャツがまたセクシーなジャバ・ザ・ハット似の男でした。
注目すべきはネクタイ。
今や世界中から愛される『ドラえもん』が無数に散りばめられたプリント柄。
そのセンス恐るべし、ドン小西も追いつけぬ流行の最先端を突っ走ってます。
引きつる表情の女性陣から『ネクタイかわい〜ぃ』とお世辞を言われ、それに照れながら黙々と酢豚を喰う姿に男意気を感じます。
女性陣のハートを射止めたと思い込んだ彼は満足し、次に回鍋肉を喰い漁るのでした。 箸を持つその手の爪が垢で黒く、まるでネイルアートのよう。

1時間後、携帯のアンテナの様な細い男が入ってきました。
シャツのボタンを4つ外し、美白肌と鎖骨を露出させ、胸には田舎の極道すら身に付けない金のネックレス、セカンドバッグを小脇に抱え、変に丈の短いスラックスで『いやぁメンゴメンゴ、5億動かす仕事が長引いちゃってさぁ』と颯爽と登場。
5億?現金輸送のアルバイトでもしてるんでしょうか?
座るや否や『俺の事、気軽にジョージって呼んでね!』と軽く自己紹介。
聞けば本名が『昭二クン』との事。
その後すぐマグニチュード5.2の貧乏ゆすりをしながら『恋愛』について有難いお説教を始めたんです。
そして決め台詞。
『運命的な出逢いでも、出逢っちゃえば後は別れに向かって進んで行くだけなんだよね byシーマン』
パクリかよ!
しかしながら、その人生の先輩面してお説教する姿、瀬戸内寂聴も歯が立ちません。
だって、周りが箸を止めうつむいて貴方の説教を有難く聴いてるんだもん、ドラリーマン以外は。


モテナイ男達の熱き闘いは次号へ続く



【追記】

前編後編に分けて『居酒屋合コン編』というのを書いてみました。
オイラはどうも合コンという物が好きじゃなく、行った事がありません。
いつも少人数制で呑んでます。
合コンじゃなくても忘年会とかでも10人を超えるともうダメだね、行く気なくなる。
強引に連れて行かれても静かに黙って酢豚を喰うドラリーマン状態。
やはり、全員に目が届く人数が好きですな。
ほら、人数多いと部落が出来るでしょ?あれが嫌なの。
オイラは広く浅くっていうお付き合いが出来ない人だから。
やっぱり、適当な人と適当な付き合いって好きじゃない。
確かにオイラは友達少ない(自ら選んでしまう)けど仲良くなると深くなる。
どっちが良いとは言い切れないけど、オイラはこっちの方が楽しいかな。
『スネ夫』は実は、中途半端に丈の短いスラックスの下は中学生の頃に履いたような白い靴下を着用しているという裏話もある。
ところが「1000文字以内に完結させる」という自己制限をしている為、あえなくカットした。


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